はじめに
本書の目的
本書は、MicroPeckerX CAN FD アプリケーション開発ライブラリ for Linuxのユーザーズマニュアルです。
本製品を使用することで、MicroPeckerXを使用してCAN及びCAN FDのモニタリングやシミュレーションを行うためのLinuxアプリケーションを開発できます。
本書の使い方
各章では、本製品の定義やAPIの機能などについて説明します。
疑問点がある場合は、FAQをご覧頂くか、弊社へお問い合わせください。
ただし、MicroPeckerX CAN FD アプリケーション開発ライブラリ for Windowsに関する技術的な問い合わせは、別途有償サポート契約が必要です。
用語説明
本書で使用する用語の説明を以下に記述します。
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| CAN | Controller Area Networkの略称。 車載ネットワーク用に開発された通信プロトコル。ISO 11898で規定された国際 標準規格。 |
| CAN FD | CAN with Flexible Data-rateの略称。 CANを拡張し、より高速・大容量のデータ送受信を可能にした通信プロトコル。ISO 11898-1:2015として標準規格化。 |
| API | Application Programming Interfaceの略称。 ソフトウェアや機器とやり取りするための仕様やインターフェース。 |
| モニタリング | 通信内容をリアルタイムに監視・記録すること。 MicroPeckerXでは、CAN/CAN-FDバスの通信データを監視する機能。 |
| シミュレーション | 実際の機器・車両を模した通信の再現や試験を行うこと。 MicroPeckerXでは、任意のCAN/CAN-FDフレームを送信することでテストを実施できる。 |
| ログ再生 | 事前に取得・記録した通信ログを、再びバス上で再生する機能。テストや検証で利用される。 |
| フレーム | 通信データの1単位。CANやCAN-FDでは、IDやデータ本体などから構成される。 |
| チャンネル(CH) | MicroPeckerXが持つ物理的な通信ポート(CH1/CH2など)。 |
| APIモード | ログ取得の方法のひとつ。API関数を定期的に呼び出してログ情報を取得する方式。 |
| コールバックモード | ログ取得の方法のひとつ。ログ情報が一定間隔で自動的にコールバック関数経由で渡される方式。 |
| ボーレート | 通信速度の単位。1秒間に送信できるビット数(bps)を示す。CANでは代表的に500kbpsや1Mbpsなどが使われる。 |
| サンプルポイント | データビットの読み取りタイミングを示すポイント。通信品質やエラー低減に影響する。 |
| 終端抵抗 | CANバスの両端に接続する120Ωの抵抗。通信波形の乱れ防止のために必須。 |
| ビットレートスイッチ(BRS) | CAN-FD特有の高速データ転送機能で、データ部のみ転送速度を上げる仕組み。 |
| FDフォーマット(FDF) | CAN-FDのフレームを識別するためのビット。 |
| エラーフラグ | フレームや通信状態でエラーが発生したことを示す指標。 |
| バッファオーバーラン | 一時記憶領域(バッファ)が一杯になり、新たなデータを保存できなくなる状態。データ消失の原因となる。 |
| リモート送信要求(RTR) | CANでデータ要求のみを伝えるフレーム種別。データ送信フレームとは区別される。 |
| IDフォーマット(IDE) | CAN IDのフォーマットを示す。標準ID(11bit)と拡張ID(29bit)がある。 |
| データレングスコード(DLC) | フレームのデータ部の長さを示す4ビット値。 |
| アービトレーションボーレート | フレームの識別(ID)などを送る区間の転送速度。CAN-FDではデータ部より低速。 |
| データボーレート | データ部の転送速度。CAN-FDでのみ設定可能。 |
| スロット | 送信データやトリガ条件を設定する論理単位。各スロットごとに個別のフレーム設定が可能。 |
| トリガ | 一定条件でフレーム送信などを開始するきっかけとなる信号やイベント。 |
本書のご利用にあたって
- 本書の内容の一部または全部を、著作者の許可なく複製、改変、翻訳することは、著作権法で認められた場合を除き禁止されています。
- 本書に掲載されている情報や画像は、執筆時点のものであり、最新の製品や製品サイトの内容(文言やデザインなど)と異なる場合があります。
- 本書に記載されている社名および製品名は、各社の商標または登録商標 です。
動作環境
本製品の動作環境を以下に示します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開発言語 | GNU C++ |
| PC | Linuxが動作するIBM PC/AT互換機 |
| 対応CPUアーキテクチャ | ・x86(64bit/32bit)[*1] ・Arm v7-A, v8-A(Cortex-A53, Cortex-A57) |
| 動作確認済み環境 | ・Ubuntu 18.04/20.04(64bit)x86 ・Raspbian 32bit(Raspberry Pi 3 Model B) |
| ハードディスク | 10Gbyte 以上の空き容量 |
| メモリ | 8Gbyte 以上を推奨 |
| USBポート | USB2.0 搭載(Hi-Speed)[*2] |
※1: 仮想環境での動作は非対応です。
※2: 外付けのUSBハブを用いてMicroPeckerXを接続する場合は、必ずセルフパワー対応機器を使用し、外部から電源を供給した上で接続してください。
USBハブをバスパワー駆動にしてMicroPeckerXを接続した場合、動作しない、または動作が不安定になることがあります。